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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)2489号 判決 1976年5月17日

主文

買受ける契約を結び、同日右売買を原因とする本件仮登記を経由したことは当事者間に争いがない。

控訴人において成立の真正を明かに争わないのでこれを自白したものとみなされる甲第一号証および同第五号証によると、被控訴人方においては昭和四七年度においては耕作を減反し、昭和四八年度においては本件土地(田・現况畑)について休耕していたので、控訴人からの住宅建設のための本件土地の買受の申入を容れて右売買契約に至つたこと、この売買においては代金は一七七万六〇〇〇円と定められ、これを「六カ月後(昭和四九年二月二七日)までに全額支払う、もし支払わないときはこの契約を解消する」と約され、控訴人は約定の昭和四九年二月までに被控訴人に対し右代金全額の支払を了したこと、右売買においては「税金や登記料その他一切は控訴人の負担とする」旨約されていること、以上の事実が認められる。

被控訴人は、控訴人が被控訴人の催告にもかかわらず、農地法五条所定の許可申請手続をしないので本件売買を解除したと主張するが、右認定によれば被控訴人は約定の期日に控訴人から代金全額の支払を受けて売買の主要な目的を達しているのであるから、控訴人が農地法五条所定の許可申請手続に協力しなくともこれを理由として本件売買契約を解除することは許されないと解すべきである。

被控訴人は、控訴人が農地法五条および三条の規定に違反する脱法行為を目的として前記売買契約をしたと主張するが、控訴人が農地法五条所定の許可申請をせず、本件土地を控訴人の父が耕作しているという事実だけでそのように判断することはできないし、他にそのように推認するに足りる事情があることについては主張も立証もない。被控訴人のその余の主張事実については立証がない。

よつて、被控訴人の本訴請求は理由がないので、原判決を取消し、右請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法九六条八九条にしたがい主文のとおり判決する。

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